研究紹介

着色廃水の脱色浄化技術、染料汚染河川の自浄作用


染色廃水を微生物で脱色浄化する技術を研究開発している。染色廃水は世界ではオイルとパルプに次いで環境を汚染している廃水である。着色の原因物質である染料は一般に生物分解が困難。分解されても発がん性物質が生成される可能性もある。

では、排水規制などにより排水がきれいに処理されるようになれば写真BやCのように汚染されていた河川はすぐにきれいになるのだろうか? いや、年単位の時間を要する。河川水はきれいにみえても河川底質には着色原因物質やその分解産物が蓄積しているため、それらが底質の微生物群により分解され低減されるのを待たなければならない。

それにしてもすごいのは底質の微生物群である。染料に汚染されている間は染料分解微生物が登場し、それも染料汚染に見合うだけの数と活性をもって存在しているが、染料が少なくなると今度は染料分解によって生成された芳香族アミンを代謝する微生物が現れる。そうして分解が進行し蓄積量が減少すると、その芳香族アミン分解微生物も減っていく。もちろん底質の微生物種はこれら以外にも多種類存在し機能はほどんど未知であるが、研究の結果、一部の微生物はこのように人為的汚染に対応して登場し、3年かけて変遷していく様子がみえた。河川水からは見えない川底にいる微生物の自然の営みである。

写真の説明: 河川に放流される前の染色工場廃水の処理水(写真A)。その染色排水が河川水に流れ出ていく様子は煙突から黒い煙が立ち昇るよう(写真B)。着色した染色排水が川を染めていく様子(写真C)。染色工場の上流側では水中には希少種ミクリが見られる(写真D)。染色工場廃水が微生物で脱色されていく様子、左から右へ時間の経過を表す(写真E)。純粋分離した複数種の微生物(番号が分離株番号)により染料を脱色させた後の着色水、色の濃さの違いは各微生物の脱色能力の違いを表し、元の着色水の色は右端の14番に近い(写真F)。

Ito T, Adachi Y, Yamanashi Y, Shimada Y, Long-term natural remediation process in textile dye–polluted river sediment driven by bacterial community changes, Water Research, 100: 458–465. (2016) doi:10.1016/j.watres.2016.05.050

MiBos(マイボス) 超小型マイクロバブル発生装置


超小型で省エネルギーな新規な微細気泡発生装置の開発。微細気泡発生装置MiBos(MiBos:Microbubble generater with an oscillating mesh)と、MiBosから霧のように微細な気泡が生成されている様子が写真左。中央の写真はその拡大、右端の写真は微細気泡を顕微鏡撮影したもの。100ミクロン以下の微細な気泡が多数見られる。わずか1分あたり数ミリリットル程度の流量で多数の気泡を連続的に発生させることができる。空気、メタン、水素、オゾンなどあらゆるガスを利用できる。MiBosは、研究室のボスが研究室の雰囲気をつくるように、微生物群の雰囲気づくりをするMicrobes' Bossという意味もある。

群馬県次世代産業研究シーズカンファレンス2015 にて発表(資料Downloadリンクあり)

JST 首都圏北部4大学発 新技術説明会 (2014年6月19日)にて発表
  ページの下から約3分の1のところに内容紹介あり(資料Downloadリンクあり)

研究室紹介(4u連携事業のHPより)(PDFに直接リンク)
  気体を微細化 空気以外も ~ 小さい 制御しやすい ~ 様々な分野へ

ストレスマネージメント


ストレスマネージメントにより微生物全細胞を統制する。栄養や酸素や空間などが不足して微生物の個々の細胞がストレスを感じると、それに抵抗する手段の1つとして集団形成(バイオフィルム形成)する(図中のB)。バイオフィルム状態は外的ストレスに強いため、人間にとっては制御が難しい状態である。微生物のストレスマネージメントにより、人間が微生物を制御しやすい状態(図中のA)へと導く。

自然界の微生物の機能発掘


土壌、河川、沿岸域(上の写真は汽水域)、微生物を単に分解者としてのみ位置づけていると説明できないことが多い。微生物が存在しているということは、そこで微生物が生き残りをかけた生き方をしているということである。一体どんな生き残り戦略があるのか。現在の生態系は微生物の種の存続戦略とそれを含み取り囲む生態系がせめぎ合いを続けて到達した結果なのであろう。この結果としてある今の生態系も変化し続けているのであろうが、その変化をとらえるにはその変化は小さすぎそして人の命は短すぎるようである。我々に見えるのは穏やかそうなこの生態系の一瞬である。1年という一瞬、10年という一瞬、100年という一瞬・・・。・・・今まで認識していなかった微生物機能の発掘の結果、水環境問題の解決に向けたアプローチも変わってくる。

その他の紹介記事

ページトップへ