本コース(旧建設工学科および旧社会環境デザイン工学科)卒業生が社会に出て、どんな仕事をしているのかを紹介します。
人間も歳を重ねると疲れてきますが,鋼材も繰り返し力がかかると疲労し,最終的には破壊してしまいます。それを疲労破壊と言います。私は,卒業論文で疲労破壊について研究いたしました。この試験は,何十万回,何百万回繰り返して力を加えますので,時間のかかる実験でした。そのため,一人で実験室に泊まり込んで,いろいろな大きさの力を試験片に加え,亀裂が発生したか,何度も何度も確認したことを覚えております。ちょっと寂しい実験ではありましたが,亀裂がきれいに確認できた時の喜びは格別でした。担当教授からもきめ細かな指導をいただき,大変感謝しております。
私は,昭和58年に東京電力へ入社し,水力発電所の建設と保守に従事して参りました。入社当時は,神奈川県の水力発電設備の保守を行い,ダムの耐震補強工事やゴム引き布製起伏堰(風船を膨らませて川をせき止めるゴム製のゲート)を設置しました。正月に行われる箱根駅伝で,箱根路の函嶺洞門付近の映像でいつも小さな堰が写りますが,自分が設計したダムとして,まだ元気に活躍しているなとテレビを見ながら昔を思い出しております。その後,群馬県や長野県内の水力発電所のダムや水路の保守と建設,本店では既設水力発電所の再開発計画などに携わりました。特にダムのいろいろな計測データに基づく安全性評価は,建設時の設計条件から始まり,地質や気象条件を確認しながら,事実を論理的に解明していく,まさに技術屋的な業務でした。また,二つの大規模なダムを築造し,その間を水路トンネルでつなぐ神流川揚水発電所の建設工事は,工事事務所の一員として,地図に残る仕事ができ,自分の誇りとなっています。なお,神流川揚水発電所は,環境調査やダムの設計・施工について,群馬大学社会環境デザイン工学科の先生方に,社内委員会の委員としてご指導をいただきながら計画の策定ならびに工事が推進され,無事に竣工したものであります。
私は,土木技術者として,安全な構造物を設計し,その設計の要求事項を満たす品質の構造物を造ること,技術的課題を理論的に解明することの素晴らしさを,仕事を通して経験することができました。これも,社会環境デザイン工学科の前身である建設工学科の一期生として,卒業してから既に30年近く経過しておりますが,困った時に相談に乗ってもらえるアットホームで頼りになる群馬大学のお陰だと痛感しております。